デザイン

コーポレートカラーの決め方──印刷・画面・看板で「同じ色」に見せる考え方

「モニターと刷り上がりの色が違う」の正体

コーポレートカラーを決めたあと、必ず起きるのがこの問題です。画面では鮮やかだった青が、印刷すると沈む。看板にすると、また少し違って見える。

原因は単純で、媒体ごとに色の作り方が違うからです。

媒体 色の作り方
画面(Web・スライド) RGB/光の三原色を足す
一般的な印刷 CMYK/インキ4色を重ねる
特色印刷 調合済みインキを直接刷る
看板・塗装 塗料・シートの既製色から選ぶ
刺繍・織り 糸の既製色から選ぶ

RGBは光を足して明るくする方式なので、鮮やかな色域が広い。CMYKはインキを重ねて暗くする方式なので、特に鮮やかな青緑、紫、蛍光色に近い領域が再現できません。画面で選んだ色が印刷で沈むのは、この構造上の差によるものです。

決め方の順序を逆にする

多くの場合、画面上でデザインしながら色を決め、あとで印刷用に変換します。この順番だと、変換時のずれを受け入れるしかありません。

推奨するのは逆の順序です。

1. まず、最も制約の厳しい媒体を特定する。
看板を出すなら塗料・シートの既製色、刺繍を使うなら糸の色番、印刷が中心なら特色見本帳。制約の強い順に候補を絞ります。

2. その制約内で色を選ぶ。
実物の見本帳から選ぶことが重要です。画面上のカラーピッカーで選んだ色が、既製色にない場合があります。

3. 他の媒体の値を、そこから決める。
選んだ色を基準に、CMYK値、RGB値(16進数)、モノクロ時の濃度を決めていきます。

この順序なら、最も再現しにくい媒体で成立することが保証されます。

図1

媒体ごとに、色の作り方そのものが違う

「モニターと刷り上がりが違う」のは事故ではなく、再現方式が違うことによる当然の結果です。

媒体 色の作り方
画面(Web・スライド) RGB/光の三原色を足す
一般的な印刷 CMYK/インキ4色を重ねる
特色印刷 調合済みインキを直接刷る
看板・塗装 塗料・シートの既製色から選ぶ
刺繍・織り 糸の既製色から選ぶ

強調した2つは既製色から選ぶため、自由度が最も低くなります。

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指定すべき値のセット

コーポレートカラーは、1つの色に対して複数の値をセットで定義します。最低限、次を揃えます。

  • 特色番号(印刷の色基準となる番号)
  • CMYK値(一般的な4色印刷用)
  • RGB/16進数値(Web・画面用)
  • モノクロ時の濃度(K◯%)
  • 塗料・シートの品番(看板を使う場合)

これらをブランドガイドラインに明記しておくと、外注先ごとに色が変わる事故を防げます。「うちの青はこれです」と口頭で伝える運用は、必ずずれます。

図2

決め方の順序を逆にする

画面で色を決めてから他の媒体に展開すると、最後に「その色は出せません」となります。

STEP 1
最も制約の厳しい媒体を特定
看板の塗料、刺繍の糸など既製色から選ぶもの
→
STEP 2
その制約内で色を選ぶ
選べる色の範囲が最初から限られている
→
STEP 3
他の媒体の値を決める
CMYK・RGB・特色番号をそこから逆算する

看板や制服を使わない事業なら、この制約は緩みます。使う予定があるかを先に確認します。

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色数をいくつにするか

主色1色+補助色1〜2色、加えてモノトーン(黒・グレー・白)というのが扱いやすい構成です。

色数が多いと、資料を作る現場がどれを使うか迷い、結果としてばらつきます。色数の少なさは、統一のしやすさに直結します。

補助色を決める際は、次の用途を想定しておきます。

  • 強調(ボタン、見出しのアクセント)
  • 注意・エラー表示
  • 背景・区切り
図3

1色につき、この5つをセットで決める

どれか1つが欠けると、その媒体で誰かが勝手に決めることになります。

特色番号
印刷の色基準。増刷時の合わせ先になる
CMYK値
一般的な4色印刷用
RGB/16進数
Web・画面用
モノクロ時の濃度
K◯%。FAXやモノクロ印刷で使う
塗料・シートの品番
看板を使う場合。既製色から選ぶ

スライドのテーマカラーに設定済みの状態で配ると、現場は値を入力せずパレットから選ぶだけになります。

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可読性の確認を忘れない

コーポレートカラーの上に白文字を置く、あるいはその色を文字色に使う場面は必ず出てきます。このとき、背景とのコントラスト比が足りないと読めません。

Webアクセシビリティの基準では、本文相当の文字で背景とのコントラスト比4.5:1以上が求められます(大きな文字は3:1以上)。明度の高い黄色やライトグリーンを主色にする場合、白文字は使えません。この確認を色の決定時に済ませておくと、後でデザインが苦しくなりません。

許容範囲を決めておく

どれだけ丁寧に指定しても、媒体ごとの差はゼロになりません。重要なのは、どこまでのずれを許容するかを決めておくことです。

  • 名刺・会社案内:厳密に合わせる(必要なら特色を使う)
  • ノベルティ・販促物:近似で可
  • 車両・制服:既製色の中で最も近いもの

この線引きを事前に共有しておくと、都度の判断で止まることがなくなります。

補助色とグレースケールの設計

主色が決まったら、周辺の色を設計します。実務で必要になるのは、次のセットです。

  • 主色(コーポレートカラー)
  • 主色の濃淡(背景・罫線用に2〜3段階)
  • アクセント色(ボタン、強調。主色と明確に異なる色相)
  • グレー3〜5段階(文字、罫線、背景)
  • 状態色(エラー=赤系、成功=緑系、注意=黄系)

グレーの設計が抜けると、資料やサイトの印象がばらつきます。本文の黒を真っ黒(#000000)にするか、やや明るいグレーにするかだけでも、読みやすさと印象が変わります。

色を使う量を決める

色の設計で見落とされがちなのが、使用比率です。目安として、主色10〜20%、補助色5〜10%、無彩色(白・グレー・黒)70〜80%という配分が扱いやすくなります。

コーポレートカラーを画面の大半に使うと、主張が強くなりすぎ、かえって重要な部分が目立たなくなります。色は、使う量が少ないほど効きます。

現場で守られる形にする

色の指定は、値を並べただけでは守られません。次の形で渡すと運用されます。

  • スライドテンプレートのテーマカラーに設定済みの状態で配布
  • CSSの変数、またはデザインツールのスタイルとして登録
  • 印刷物用の色見本(実際に刷ったチップ)を1枚用意

1つ目が最も効きます。提案書を作る現場は、値を入力するのではなく、パレットから選びます。パレットが正しく設定されていれば、間違いようがありません。

既存の色を変えるときの注意

コーポレートカラーの変更は、ロゴ変更と同等の影響があります。看板、車両、制服、在庫の印刷物すべてが対象です。

微調整のつもりでも、既存物との差が目立つことがあります。特に看板と印刷物を並べて見る機会がある場合(店舗、ショールーム)、新旧の差が品質の問題に見えてしまいます。変更する場合は、切り替え計画とセットで進めます。

まとめ

コーポレートカラーは「好きな色を選ぶ」作業ではなく、複数の媒体で成立する色を選び、値をセットで定義し、許容範囲を決める作業です。この手順を踏めば、媒体をまたいでも一貫した見え方を保てます。

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