「サイトがあるから紙は不要」への違和感
会社案内の制作相談をいただくと、社内で必ず出る意見があります。「サイトを見てもらえばいいのでは」。まっとうな指摘です。情報量も更新性もWebに分があり、印刷費も郵送費もかかりません。
それでも紙が残っている場面があります。共通しているのは、相手がこちらのペースで情報を見られない状況です。
場面1:商談の場で、相手の手元に残す
商談中、相手はメモを取り、資料を見比べ、あとで社内に共有します。このとき手元に1冊あると、次の3つが起きます。
- 説明の順番をこちらで設計できる(ページをめくる順が話の順になる)
- 商談後に会議室に残る(同席していない人の目に触れる)
- 上司への説明時に、そのまま渡せる
Webサイトは相手のペースで見られますが、裏を返せばどの順番で何を見るかをこちらが決められません。商談という限られた時間の中では、順番を決められることが効きます。
BtoB商談で紙が効く3つの場面
共通しているのは、相手がこちらのペースで情報を見られない状況です。
商談の場で、手元に残す
説明の順番をこちらで設計でき、商談後も会議室に残り、上司への説明にそのまま渡せます。Webは相手のペースで見られる反面、見る順番を決められません。
展示会で、思い出させる
来場者は1日に何十社もの説明を受けます。配布物の役割は情報伝達ではなく、帰社後に思い出させること。網羅的な会社案内より、1テーマの薄い資料が効きます。
採用で、周囲に見せられる
候補者は入社を決める前に周囲に相談します。URLを送るより1冊渡すほうが伝わる場面があります。
逆に、商談がオンライン中心/提案のたびに内容をカスタマイズ/事業の変化が速い/配布機会が年数回、という場合は優先度を下げて構いません。
場面2:展示会・イベントで、比較の対象になる
展示会では、来場者は1日に何十社もの説明を受けます。帰社後に記憶に残っているのは、印象的だった数社だけです。
ここで配布物が果たす役割は、情報を伝えることではなく思い出させることです。したがって設計の軸も変わります。網羅的な会社案内より、1テーマに絞った薄い資料のほうが持ち帰られやすく、読まれやすい。ブースで受けた質問と、資料の中身が一致していることが重要です。
ページ数は「使う場面」から逆算する
網羅性を目指すと、どの場面でも中途半端になります。使う場面が挙がらないなら、作らない判断も正解です。
場面3:採用で、家族や周囲に見せられる
中途・新卒を問わず、候補者は入社を決める前に周囲に相談します。このとき、URLを送るより1冊渡すほうが伝わることがあります。特に地方採用や、保護者の意見が影響する場面では、紙の存在感は無視できません。
変わらない情報と、変わる情報を分ける
印刷物の最大の制約は、更新できないことです。変化の速い情報を本体に入れると、刷った直後から古くなります。
差し込み
ポケット
差し込みポケットを作っておくと、本体の寿命が延び、結果として総コストが下がります。
逆に、作らなくてよいケース
次に当てはまる場合は、優先度を下げて問題ありません。
- 商談がオンライン中心で、画面共有で完結している
- 提案のたびに内容をカスタマイズしており、汎用資料の出番がない
- 事業内容の変化が速く、1年で記載が古くなる
- 配布機会が年に数回しかない
特に3つ目は重要です。印刷物は、更新できないことが最大の制約です。変化の速い事業を無理に紙にすると、刷った直後から古くなります。この場合は、変わらない部分(理念、沿革、体制、拠点)だけを紙にし、変わる部分(サービス詳細、価格、事例)はWebや差し込みの1枚ものに分けるのが現実的です。
作ると決めたときの設計方針
ページ数は使う場面から逆算する。 商談で使うなら8〜12ページ。展示会配布なら4ページか、A4二つ折り。網羅性を目指すと、どの場面でも中途半端になります。
先頭に「何をしている会社か」を1文で置く。 理念やご挨拶から始まる構成は、既に関心のある読者にしか届きません。
数字を入れる。 設立年、拠点数、取引社数、対応実績。抽象的な言葉より、数字が信頼を作ります。
差し込みポケットを作る。 事例シートや価格表を後から入れ替えられる構造にしておくと、本体の寿命が延びます。
制作の進め方と期間の目安
会社案内の制作は、原稿の準備がスケジュールを左右します。8〜12ページの標準的な構成で、工程ごとの目安を示します。
| 工程 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 構成設計 | 使用場面の確認、掲載項目の決定、ページ割り | 2〜3週 |
| 取材・原稿 | 経営層・現場へのヒアリング、原稿執筆 | 3〜4週 |
| 撮影 | 社屋、作業現場、人物 | 1日〜 |
| デザイン | レイアウト、図版作成 | 3〜4週 |
| 校正 | 社内確認、修正 | 2〜3週 |
| 印刷 | 入稿から納品 | 1〜2週 |
校正の工程を短く見積もらないことが重要です。確認者が複数部署にまたがる場合、往復だけで数週間かかります。展示会や周年行事に合わせる場合は、逆算して2か月以上の余裕を見ておくと安全です。
掲載項目の決め方
「何を載せるか」で迷ったら、読者が知りたい順に並べます。自社が言いたい順ではありません。
- 何をしている会社か(1文)
- 誰に、どんな価値を提供しているか
- 具体的に何ができるか(事業・サービス)
- 実績・体制・規模を示す数字
- 会社の考え方(理念・沿革)
- 会社概要・拠点・連絡先
理念やご挨拶を先頭に置く構成が根強くありますが、初対面の読者にとっては後半でよい情報です。既に関心を持っている読者にとっては重要なので、削るのではなく、順番を変えます。
撮影を入れるかどうか
写真素材を新規撮影するか、既存写真やストックフォトで済ませるかは、費用と効果のバランスで決まります。
BtoBの会社案内では、社屋・設備・実際に働いている人の写真が信頼につながります。特に製造業・建設業・技術系では、現場の写真の有無が印象を大きく左右します。一方、ストックフォトの人物写真は、どの会社の資料でも見かけるため、差別化にはなりません。
予算が限られる場合、現場カット1日分だけ撮影し、他は図版で構成するという配分が現実的です。
まとめ
会社案内は「あるべきだから作るもの」ではなく、使う場面が具体的にあるから作るものです。場面が挙がらないなら作らない。挙がるなら、その場面に合わせて仕様を決める。この順で考えると、費用の判断がしやすくなります。
制作前の要否判断からご相談いただけます。
