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【2026年改正】JIS X 8341-3とWCAG 2.2──BtoB企業サイトが今から備える実務チェック

何が起きているのか

ウェブアクセシビリティの日本産業規格であるJIS X 8341-3が、約10年ぶりの改正に向けて動いています。2025年9月に国際規格ISO/IEC 40500が最新のWCAG 2.2相当へ更新され、同年10月にはウェブアクセシビリティ基盤委員会に改正原案作成委員会が発足しました。改正JISの発行は2026年度中が見込まれています。

背景には、2024年4月1日に施行された改正障害者差別解消法があります。この改正により、民間事業者による合理的配慮の提供が努力義務から法的義務になりました。ウェブサイトのJIS準拠そのものが法的義務になったわけではありませんが、合理的配慮を実現する有力な手段として位置づけられています。

「義務化されたから対応しなければならない」という単純な話ではない一方で、取引先から要件として提示される場面は確実に増えています。特に官公庁・自治体・大企業との取引がある企業では、提案依頼書(RFP)に準拠レベルが明記されるケースが一般的になりつつあります。

WCAG 2.0から2.2で何が変わるか

現行JISが参照していたWCAG 2.0の達成基準は38項目でした。WCAG 2.2ではこれが約55項目に増えます。増えた部分の性格は、大きく次の3方向です。

  • モバイルのタッチ操作への対応強化
  • フォーカス表示の視認性向上
  • 認知機能・高齢者への配慮の新設

重要なのは、WCAG 2.2は2.0の上位互換だという点です。これまでの対応が無駄になることはありません。

押さえておきたい新基準の例

ターゲットサイズ:ボタンやリンクの操作領域を最低24×24CSSピクセル以上確保する。スマートフォンのフッターに小さなリンクを並べているサイトは、ここで引っかかります。

フォーカスの見た目:キーボード操作時のフォーカス枠を、より太く、周囲とのコントラストを確保して表示する。デザイン上の理由でフォーカス枠を消しているサイトは、修正対象です。

冗長な入力項目:同じ手続きの中で、一度入力した情報を再入力させない。確認画面を経由する問い合わせフォームで起きがちです。

アクセシブルな認証:複雑なCAPTCHAなど、記憶や転記を要する認証に代替手段を用意する。

企業サイトが優先すべき着手順

一度にすべてを満たすのは現実的ではありません。費用対効果の高い順に整理します。

第1優先:構造とテキスト

見出しレベルの正しい入れ子、画像の代替テキスト、リンクテキストの具体化(「こちら」をやめる)、言語属性の指定。これらは既存サイトでも比較的低コストで改善でき、検索エンジンや生成AIによる内容理解にも直接効きます。

第2優先:色とコントラスト

本文と背景のコントラスト比、リンクの識別を色だけに頼らない、フォームのエラー表示を赤字だけにしない。ブランドカラーとの調整が必要になるため、デザイン側の判断が入ります。

第3優先:操作

キーボードのみでの操作完結、フォーカス表示、ターゲットサイズ、動画の自動再生停止。実装コストが上がるため、リニューアルのタイミングに合わせるのが現実的です。

第4優先:方針の公開

アクセシビリティ方針を策定し、対応レベルと範囲、試験結果を公開する。取引条件として求められた際の回答資料になります。

発注する側が準備しておくこと

制作会社に依頼する場合、要件定義に次を明記しておくと後の認識違いを防げます。

  • 準拠を目指す規格とレベル(例:WCAG 2.2 レベルAA)
  • 対象範囲(全ページか、主要導線のみか)
  • 試験の実施有無と、結果の公開可否
  • 公開後の運用(更新時に誰が何を確認するか)

特に4つ目が抜けがちです。公開時に準拠していても、記事を追加するたびに代替テキストのない画像が増えていけば、状態は維持できません。

制作会社に確認しておくとよい質問

依頼先を選ぶ際、次の質問への回答で対応力がおおよそ分かります。

  • アクセシビリティ試験の実施経験はあるか。試験結果の報告書を出せるか
  • キーボードのみでの操作確認を、どの工程で行っているか
  • CMSで記事を追加する際、代替テキストの入力を必須にできるか
  • 動画・PDFを掲載する場合の対応方針はあるか

3つ目が実務上は効きます。公開時に準拠していても、運用で崩れるのが最も多いパターンです。CMS側で入力を促す仕組みがあるかどうかで、数年後の状態が変わります。

費用感の考え方

アクセシビリティ対応は、リニューアルとは別に単独で発注することもできますが、次の切り分けで考えると予算化しやすくなります。

対応範囲実施時期
テキスト・構造の改善既存サイトのまま実施可能
色・コントラストの調整デザイン改修と同時
操作・実装の改修リニューアル時
試験・方針公開対応完了後

1段目は既存サイトのまま着手でき、費用も比較的抑えられます。リニューアルの予定が当面ない場合でも、ここから始める価値があります。

よくある誤解

「画像に代替テキストを入れれば対応済み」ではありません。 代替テキストは重要な項目のひとつですが、達成基準は約55項目あります。一方で、すべてを一度に満たす必要もありません。優先順位を付けて段階的に進めるのが現実的です。

「アクセシビリティ対応するとデザインが制約される」とも限りません。 コントラストや文字サイズの確保は、結果として読みやすい紙面・画面につながります。制約というより、設計条件のひとつと捉えるほうが実態に近いと考えています。

まとめ

改正JISの発行は2026年度中の見込みで、今から準備を始めれば十分に間に合います。そして、この対応の多くは「障害のある人のための特別対応」ではなく、すべての読み手にとって読みやすく、機械にも理解しやすいサイトを作る作業と重なります。取り組みの副次効果として、検索・AI経由の流入にも効いてきます。

弊社では、既存サイトの現状把握から、方針策定、改修設計までご相談を承っています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法的判断については専門家にご確認ください。

参考

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