見た目は新しくなったのに、問い合わせは変わらない

BtoB企業のサイトリニューアルで最も多い相談が、これです。デザインは刷新され、スマートフォンでもきれいに表示されるようになった。それでも、問い合わせの数も質も、公開前とほとんど変わらない。
この現象は制作会社の力量だけで説明できるものではありません。私たちが関わってきた案件を振り返ると、ほぼ例外なく「発注する前の段階」で決まっていました。
原因1:目的が「古くなったから」で止まっている
リニューアルのきっかけとして最も挙がる理由が、「デザインが古い」「スマホ対応していない」「CMSのサポートが切れる」です。どれも正当な理由ですが、これらは着手の理由であって、目的ではありません。
目的とは、リニューアル後に何が起きていれば成功と言えるか、です。
- 問い合わせのうち、価格帯の合わない案件を減らしたい
- 採用応募者が、面接前に事業内容を理解している状態にしたい
- 営業が商談中に見せられるページを増やしたい
この3つは、どれも正しい目的ですが、必要な設計はまったく違います。1つ目なら価格レンジや導入条件を早い段階で開示する構成になり、2つ目なら現場社員の言葉を載せる取材が必要になり、3つ目なら検索流入よりも直リンクで開ける資料性の高いページが要ります。目的を決めずに着手すると、この3つを全部少しずつ入れた、どれにも刺さらないサイトになります。

原因2:評価指標がPV数のままになっている
BtoBの購買は、社内の複数人が、数か月かけて検討します。ひとりの担当者が調べ、比較表を作り、上司に説明し、稟議を通す。この過程でサイトは何度も開かれますが、その多くは「問い合わせボタンを押すため」ではなく「説明材料を集めるため」です。
にもかかわらず評価指標がPVとCV数だけだと、資料性の高いページ——導入の流れ、費用の考え方、よくある質問、事例の詳細——は「直接CVしないページ」として軽く扱われます。結果として、検討の中盤を支えるページが薄いサイトができあがります。
リニューアル前に、次の3種類の指標を分けて設定しておくことをおすすめします。
- 獲得の指標:問い合わせ数、資料請求数
- 理解の指標:事例・価格・導入フローページの閲覧率、同一訪問者の再訪率
- 質の指標:商談化率、失注理由に「想定と違った」が含まれる割合
3つ目は解析ツールでは測れません。営業担当へのヒアリングで拾う必要があります。

原因3:意思決定の構造が決まっていない
デザインの要素が増え続ける現象は、担当者の判断力の問題ではなく、決め方が決まっていないことから起きます。関係部署が一巡するたびに「うちの製品も載せてほしい」「この実績も入れたい」と要望が加わり、最終的にトップページが総合カタログになる。誰も間違っていないのに、結果だけが悪くなります。
これを防ぐ方法は単純です。着手前に、次を紙に書いておきます。
- 決裁者は誰か(複数人にしない)
- 意見を聞く範囲はどこまでか(見る人と、決める人を分ける)
- 要素を追加する時、何を外すか(総量の上限を決めておく)
3つ目が特に効きます。「追加してよいが、同じ面積のものを1つ外す」というルールを最初に合意しておくと、議論が「載せるか否か」から「何が最も重要か」に変わります。

発注前チェックリスト
- リニューアル後に起きていてほしい状態を、1文で書けるか
- 獲得・理解・質の3指標を、公開前の数値とセットで持っているか
- 決裁者を1人に決めたか
- 追加要望が出た時のルールを合意したか
- 既存サイトで最も読まれているページを把握しているか
- 営業が実際に商談で使っているページを聞き取ったか
この6つが埋まっていれば、制作会社との最初の打ち合わせの質が大きく変わります。逆に埋まらないまま提案依頼をすると、各社から出てくるのは「きれいなデザイン案の比較」になり、判断材料になりません。
提案依頼書(RFP)に書いておくと提案の質が上がる項目
発注前の整理が済んだら、それを提案依頼書の形にまとめます。A4で2〜3枚あれば十分です。
- 現状の課題:数字で書く(問い合わせ件数、そのうち商談化した件数、想定と違った失注の割合)
- リニューアル後の目標状態:1文で
- 対象読者:業種、規模、部門、役職まで
- 必須要件:多言語対応、CMS、アクセシビリティ準拠レベル、既存システムとの連携
- 支給できるもの:原稿、写真、ロゴデータ、既存サイトの解析データ
- 予算レンジと公開希望日
- 社内体制:決裁者、窓口担当者、確認に関わる部署
予算を書かないほうが安く済む、ということはありません。書かない場合、各社は安全側に見積もるか、範囲を絞った提案を出します。レンジだけでも示すと、その範囲で最大限の提案が返ってきます。
よくある質問
Q. 部分改修で済ませることはできますか
できる場合があります。既存サイトの構造が破綻していない、CMSのサポート期限に余裕がある、主要導線だけが問題、という状況なら、全面リニューアルより短期間・低コストで成果が出ます。まず現状の経路を確認したうえで判断することをおすすめします。
Q. 制作期間はどれくらいかかりますか
規模によりますが、中規模のコーポレートサイトで、要件整理から公開まで4〜6か月程度を見ておくと現実的です。取材・撮影を含む場合、原稿の確認工程がスケジュールを左右します。社内確認に要する日数を、実際より短く見積もらないことが重要です。
まとめ
サイトリニューアルは、デザインを更新する作業ではなく、自社が誰に何をどの順番で伝えるかを決め直す作業です。決め直しが終わっていれば、デザインはその結論を形にするだけで済みます。終わっていなければ、どれだけ丁寧に作っても「作り直しただけ」で終わります。
リニューアルを検討し始めた段階でのご相談も承っています。発注先を決める前の整理からお手伝いできます。
