「CTAボタンを目立たせる」では動かない

問い合わせが増えないという相談を受けたとき、最初に提案されがちなのが、ボタンの色を変える、位置を変える、追従バーを付ける、といった改修です。効果がないわけではありませんが、BtoBサイトでこれらが劇的に効くことは多くありません。
理由は単純で、BtoBの訪問者は「押すかどうか」で迷っているのではなく、「まだ押す段階ではない」からです。押せない人にボタンを見せ続けても、押される数は大きくは変わりません。
改善すべきは、押せる状態まで運ぶ経路のほうです。
訪問者は3つの状態で来ている
BtoBサイトに来る人は、おおむね次の3状態に分かれます。
| 状態 | 知りたいこと | 必要なページ |
|---|---|---|
| 課題を言語化中 | 自分の困りごとに名前が付くか | 解説記事、比較の観点 |
| 手段を比較中 | 何ができて、いくらで、どう進むか | サービス詳細、費用の考え方、導入フロー |
| 社内説明中 | 上司に見せられる材料があるか | 事例、実績、会社情報、資料ダウンロード |
問い合わせという行動が起きるのは3段目です。ところが多くのサイトは、1段目(記事)と3段目(問い合わせフォーム)は整備されているのに、2段目が薄い。記事を読んだ人が、費用感も進め方も分からないまま、いきなり問い合わせを求められる構造になっています。これが最も多い断絶です。

断絶が起きやすい4つの地点
1. 記事からサービスへ
記事の最後に「お問い合わせはこちら」とだけ置かれているパターン。読者はまだ状態1にいるので、次に必要なのは問い合わせ先ではなく、その記事のテーマに対応するサービスページへのリンクです。記事ごとに接続先を変えるだけで、サービスページの閲覧が伸びます。
2. サービスページで費用に触れていない
「お見積もりします」だけの記載は、比較段階の人を止めます。総額を出せなくても、レンジ、決まり方、何で変動するかは書けます。価格を書かないことは、価格の高さを隠すことではなく、検討から外れることを意味します。
3. 事例が「実績一覧」で終わっている
ロゴだけが並ぶ実績一覧は、信頼の証明にはなりますが、社内説明の材料にはなりません。必要なのは、課題・与件・進め方・結果が1ページで追える形です。1本でも深い事例があれば、担当者はそれを印刷して会議に持っていけます。
4. フォームが最後の関門になっている
必須項目が多い、電話番号が必須、用途の記入欄が自由記述で大きい。いずれも入力途中で離脱を生みます。BtoBで最初に必要な情報は、会社名・氏名・メールアドレス・相談内容の選択肢、程度で足ります。

優先順位の付け方
すべてを直すには時間も費用もかかります。判断は次の順で行います。
- 入口ページ上位10本の、次のページ遷移率を見る。遷移率が極端に低い記事が、最も損をしている地点です。
- サービスページの離脱率を見る。ここが高いなら、内容不足(費用・進め方)を疑います。
- フォーム到達数と送信数の比を見る。到達しているのに送信されないなら、フォーム自体の問題です。
この3つを見れば、ボタンの色を議論する前に、どこに穴が空いているかが分かります。

経路で考えると、必要な制作物が変わる
導線を経路で捉え直すと、「新しいLPを1本作る」よりも、「既存のサービスページに費用の考え方を1セクション足し、記事10本のリンク先を変える」ほうが効くケースが多くあります。制作物としては地味ですが、成果は大きく動きます。
弊社では、サイト改修のご相談をいただいた際、まず既存サイトの経路を確認し、新規制作が不要と判断すればそう申し上げます。作らないほうが早い場合があるからです。
記事からサービスへつなぐ、具体的な書き方
記事の末尾に置く導線は、定型文では機能しません。記事のテーマと、その先にある自社サービスの関係を1〜2文で説明します。
悪い例:「お問い合わせはこちら」
良い例:「本記事で触れた構成案の整理は、弊社のパンフレット制作でも最初の工程として必ず行っています。進め方の詳細はこちらをご覧ください」
記事と接続先の間に、橋渡しの1文を置く。これだけで遷移率は変わります。記事ごとに書き分ける手間はかかりますが、テンプレートを回すより効果があります。
検討中の人を逃さない出口を用意する
BtoBでは、記事を読んだ時点ではまだ発注段階にない読者が大半です。この人たちを問い合わせフォームだけで受けようとすると、大半は何も残さずに去ります。
段階の違う出口を用意します。
| 読者の状態 | 用意する出口 |
|---|---|
| 情報収集中 | 資料ダウンロード(チェックリスト、事例集) |
| 比較検討中 | 価格の考え方ページ、オンライン相談 |
| 社内説明中 | 提案依頼書のひな形、導入フロー資料 |
資料ダウンロードは、どの資料が選ばれたかで検討段階が分かります。営業のフォロー内容を変える材料になるため、問い合わせ件数以上の価値があります。
改善を続ける体制
導線の改善は、一度直せば終わりではありません。記事が増えれば経路も増えます。四半期に一度、入口ページ上位10本の遷移先を確認し、接続が切れているものを直す——この運用を回すだけで、サイトは少しずつ良くなっていきます。
まとめ
問い合わせが増えないとき、疑うべきはボタンではなく経路です。訪問者が今どの状態にいて、次に何を知る必要があるか。その一段ずつを埋めていくと、結果としてボタンは押されます。
