来場者の鞄の中で何が起きているか
展示会の来場者は、1日で多いときは数十社のブースを回り、その都度資料を受け取ります。夕方には鞄が重くなり、帰社後には机の上に山ができます。ここから先、実際に目を通されるのは、ごく一部です。
この選別が何を基準に行われているかを考えると、資料の設計方針が決まります。選ばれるのは、内容が優れている資料ではなく、その場の会話を思い出せる資料です。
設計原則1:分厚い会社案内を配らない
総合的な会社案内は、情報量が多いぶん、何の会社だったかを思い出す手がかりになりません。表紙を見ても「そういえば何を話したんだっけ」となり、保留の山に入ります。
有効なのは、ブースで話した内容と1対1で対応する薄い資料です。テーマを1つに絞り、A4で4ページ、場合によっては両面1枚で足ります。複数テーマを扱っているなら、テーマごとに別の紙を用意し、会話に応じて渡し分けます。
配布物は3種類に分けると、総額はむしろ下がる
1種類ですべてに対応しようとすると中途半端になります。関心度で分けるのが実務的です。
通りすがり用
A4二つ折り・薄手。足を止めていない人へ。社名と「何の会社か」が分かればよい。原価を抑えて大量に
説明を受けた人用
A4・4ページ/テーマ別。ブースで話した内容と1対1で対応させる。ここが最も重要
検討段階の人用
会社案内+事例集。商談に近い話をした相手にのみ。部数は少なく、単価をかける価値がある
全員に厚い資料を配る必要がなくなるため、3種類に分けたほうが総印刷費は下がることがあります。
設計原則2:表紙に「誰の何」を書く
社名とキャッチコピーだけの表紙は、思い出す手がかりになりません。表紙に必要なのは次の3点です。
- 対象(どんな会社・部門向けか)
- 扱う課題(何を解決するか)
- 社名
デザイン的には地味に見えますが、帰社後の選別を通過することが最優先です。美しさは中面で担保します。
表紙は「美しさ」より「思い出せるか」
帰社後に選ばれるのは、内容が優れた資料ではなく、その場の会話を思い出せる資料です。
表紙は地味に見えても構いません。美しさは中面で担保します。
設計原則3:次の行動を1つに絞る
資料の最後に、問い合わせ先、サイトURL、SNS、資料請求、セミナー案内を全部載せると、どれも選ばれません。展示会後に最も起こしてほしい行動を1つ決め、それだけを目立たせます。
多くの場合、その場での成約ではなく「詳細資料の請求」や「オンライン相談の予約」が適切です。二次元コードから直接その画面に飛べるようにし、トップページに飛ばさないことが重要です。
出展2か月前からの逆算
出展が決まってから慌てて作ると、既存の会社案内の流用になりがちです。
| 時期 | 作業 |
|---|---|
| 出展2か月前 | ブースで話すテーマを確定、資料の本数を決定 |
| 6週間前 | 構成・原稿作成 |
| 4週間前 | デザイン制作 |
| 3週間前 | 校正・修正 |
| 2週間前 | 入稿 |
| 1週間前 | 納品・ブース運営の打ち合わせ |
印刷の納期は部数と仕様で変わります。特殊加工を入れる場合はさらに前倒しが必要です。
設計原則4:ブース運営と資料を連動させる
資料単体を改善しても限界があります。効くのは、ブースでの会話と資料の対応づけです。
- ブースのパネルに書いてある言葉を、資料の見出しにも使う
- 説明担当者が、渡すときに「今お話しした◯◯のところが3ページ目です」と言える構造にする
- 名刺交換時に、渡した資料の種類を記録する(後日フォローの内容が変わります)
3つ目は運用の話ですが、成果に直結します。どの資料を渡したかが分かっていれば、フォローメールの一文目を変えられます。
設計原則5:サイズと重さを考える
来場者は資料を持ち歩きます。A4のクリアファイル入り、厚紙、大判サイズは、鞄に入れづらいという理由だけで置いていかれることがあります。
A4より小さい、軽い、折り目がある——この3条件は、内容と無関係に持ち帰り率を上げます。二つ折りのA4(仕上がりA5)は、扱いやすいサイズの代表です。
準備スケジュールの目安
展示会の資料は、出展が決まってから慌てて作ると、既存の会社案内の流用になりがちです。逆算の目安を示します。
| 時期 | 作業 |
|---|---|
| 出展2か月前 | ブースで話すテーマを確定、資料の本数を決定 |
| 6週間前 | 構成・原稿作成 |
| 4週間前 | デザイン制作 |
| 3週間前 | 校正・修正 |
| 2週間前 | 入稿 |
| 1週間前 | 納品・ブース運営の打ち合わせ |
印刷の納期は部数と仕様で変わります。特殊加工を入れる場合は、さらに前倒しが必要です。
配布物の種類を3つに分ける
展示会では、来場者の関心度がまちまちです。1種類の資料ですべてに対応しようとすると、中途半端になります。3種類に分けるのが実務的です。
1. 通りすがり用(A4二つ折り・薄い)
足を止めていない人に手渡す。社名と「何の会社か」が分かればよい。原価を抑え、大量に用意します。
2. 説明を受けた人用(A4・4ページ/テーマ別)
ブースで話を聞いた人に、話した内容に対応するものを渡す。ここが最も重要です。
3. 具体的な検討段階の人用(会社案内+事例集)
その場で商談に近い話をした相手にのみ渡す。部数は少なくてよく、単価をかける価値があります。
3種類に分けると、総印刷費はむしろ下がることがあります。全員に厚い資料を配る必要がなくなるためです。
会期後のフォローまで設計する
展示会の成果は、会期中ではなく会期後に決まります。資料設計の段階で、フォローまで含めて考えます。
- 名刺と渡した資料の種類を紐づけて記録する
- 会期後3営業日以内に、資料の内容に触れたメールを送る
- 資料に載せた二次元コードの読み取り数を確認する
- 二次元コードの遷移先は、専用ページにして経路を把握できるようにする
4つ目が有効です。トップページに飛ばすと、展示会経由かどうかが分からなくなります。専用ページにすれば、誰がいつ見たかを追えます。
ブースのパネルと資料の関係
パネルは「足を止めさせるもの」、資料は「思い出させるもの」と役割が違います。
パネルは遠距離から読ませるため、文字数を極端に絞ります。目安として、メインコピーは10文字前後、視線の高さに配置。詳しい説明はパネルではなく、口頭と資料に任せます。
パネルに書いた言葉と、資料の見出しを一致させておくと、来場者の記憶の中でブースと資料が結びつきます。別々に作ると、この接続が切れます。
まとめ
展示会の資料は、その場で読ませるものではなく、帰社後に思い出してもらうためのものです。この前提に立つと、薄く、テーマを絞り、表紙で用件が分かり、次の行動が1つに絞られた資料が正解になります。
展示会の資料一式のご相談、ブースのパネルとの連動設計も承っています。
