読まれない技術資料は、情報が多いせいではない
仕様書、価格表、製品比較表。BtoBの現場で最も読まれるべき資料が、最も読みにくい形で配られていることがよくあります。弊社がご相談をいただく際、持ち込まれる原稿は表計算ソフトの画面をそのまま印刷したもの、というのが典型です。
このとき「情報を減らしましょう」と申し上げることは、ほとんどありません。技術資料を読む相手は、必要な数字を探しに来ています。減らすと用をなしません。問題は量ではなく、探している数字にたどり着けるかどうかです。
読みにくさの正体は、ほぼ版面の設計に集約されます。罫線、余白、文字のそろえ方、注記の位置。いずれも内容を変えずに直せる部分です。
罫線はどこまで引くべきか
表組みで最もよく見かける失敗は、すべてのマスを罫線で囲むことです。格子状の罫線は、行をたどる目の動きを断ち切ります。結果として、同じ行を何度も見失います。
罫線の引き方で読みやすさが変わる
縦罫を減らし、横方向の流れを残す。これが表組みの基本です。
列の区切りは、罫線よりも列間の余白で示すほうが読みやすくなります。
縦罫をどうしても引く必要があるのは、列数が多く、横に長い表の場合です。その場合も、すべての列間ではなく、意味のまとまりの境目だけに引きます。
数字はどうそろえるか
価格表で読み違えが起きる最大の原因は、桁のそろえ方です。数字を中央そろえや左そろえにすると、桁数の違う数字が並んだときに大小が目で読めません。
数値の扱いで決めておく5項目
いずれも資料全体で統一します。ページごとに違うと信頼されません。
| 項目 | 原則 |
|---|---|
| そろえ | 右そろえ。小数点がある場合は小数点でそろえる |
| 桁区切り | 3桁ごとのカンマを入れる。4桁以上は必ず |
| 単位 | 列の見出しに出す。各セルに繰り返さない |
| 書体 | 数字の幅がそろう設定を使う。幅が揺れると桁が合わない |
| 税の扱い | 税抜・税込をページ内に明記。混在させない |
単位をセルごとに繰り返すと、数字そのものが読み取りにくくなります。見出しに1回で足ります。
単位を見出しに出す方式は、表が横に長くなったときに効きます。「価格(円・税抜)」と見出しに書いてあれば、本文側は数字だけで済みます。
注記はどこに置くか
技術資料には例外や条件が必ず付きます。その注記を資料の最後にまとめると、読者は表と注記のあいだを往復することになり、結局読まれません。
弊社がお勧めしているのは、注記を参照元と同じ見開き、できれば同じページの下に置くことです。注記の記号は、米印の重ね打ち(※※※)ではなく、丸数字や小さな数字を使って、どの注がどれに対応するかを一意にします。
1ページに入れる情報はどこまでか
紙の資料では、1ページに収めたい気持ちが働きます。ただし、文字を小さくして詰め込むと、現場で使えなくなります。
読める下限の目安
弊社の案件での目安です。読者の年齢層や使用場面によって調整してください。
本文の文字
A4の資料で9ポイント以上。現場で立って見る資料は10.5ポイント以上
表の文字
8ポイントまで。これを下回るなら、ページを分ける判断に切り替える
外側の余白
A4で上下左右15ミリ以上。綴じる資料は綴じ側を5ミリ足す
数値は目安であり、断定的な基準ではありません。実際の読まれ方に合わせて確認してください。
収まらない場合の対処は、文字を小さくすることではなく、列を減らすことです。ほとんど参照されない列を別表に移すだけで、本表は一気に読みやすくなります。どの列が参照されているかは、営業に聞けば分かります。
白黒で印刷されても機能するか
技術資料は、相手の社内で白黒コピーされて回覧されることが前提です。色だけで区別している情報は、コピーされた時点で失われます。
該当や非該当を色の違いで示している表は、記号(○と×、あるいは塗りの濃淡)を併用してください。これは色覚の多様性への配慮としても必要な対応です。弊社では、制作の途中で必ず白黒出力して確認しています。
改訂をどう管理するか
価格表と仕様書は改訂されます。表紙や各ページの隅に、改訂日と版数を入れてください。古い版が現場に残っていたときに、どちらが新しいか判別できます。
ファイル名に日付を入れるだけでは不十分です。印刷された紙には、ファイル名が付いていません。
弊社では、価格表・仕様書・製品比較表などの技術資料について、原稿をそのままお預かりして版面を設計し、改訂しやすいひな形までお渡しする形でお手伝いしています。表計算ソフトのデータからの組み直しも承っていますので、現行の資料をお持ちの状態でご相談ください。
