表示のチェックは、誰の仕事になっているか
結論から申し上げます。広告表示の事故は、知識が足りないから起きるのではなく、誰が最終確認をするのかが決まっていないから起きます。制作会社は意匠を作り、営業は売りたい言葉を入れ、確認は「全員が何となく見た」状態で世に出ます。
弊社がチラシやパッケージ、サイトの制作をお引き受けする際、原稿の段階で「この数字の根拠はどこにありますか」とおうかがいします。嫌がられることもありますが、刷ってから回収するほうがはるかに高くつきます。
景品表示法で問題になる表示とは、どういうものか
景品表示法が規制する不当表示の代表が、優良誤認表示と有利誤認表示です。前者は品質や内容を実際より良く見せるもの、後者は価格や取引条件を実際より有利に見せるものです。
実務で危ないのは、嘘をつくつもりがない表現です。
- 「No.1」「業界初」:調査の範囲と時点、出典が示せるか。示せない場合は使えません。
- 「期間限定」「通常価格◯◯円」:その通常価格で実際に相当期間販売していた実績があるか。
- 「導入実績多数」「満足度95%」:母数と調査方法が説明できるか。
- お客様の声:実在する方の実際の発言か。効果の保証と読まれる表現になっていないか。
違反が認められた場合、消費者庁は措置命令(行政処分)を行います。優良誤認表示・有利誤認表示については、課徴金納付命令の対象にもなります。
ステマ規制は、2023年10月から施行されています
もうひとつ押さえておきたいのが、いわゆるステマ規制です。「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が景品表示法上の不当表示として指定され、この告示は令和5年(2023年)10月1日から施行されています。
消費者庁が公開しているQ&Aから、実務で効く点を挙げます。
ステマ規制で押さえる4点
「お金を払ったかどうか」ではなく「表示内容の決定に関与したか」が基準です。
| 論点 | 消費者庁Q&Aに示されている考え方 |
|---|---|
| 対象 | 事業者が表示内容の決定に関与している場合は「事業者の表示」にあたる。明示的に指示していなくても、関係性などから関与が認められる場合がある |
| 明瞭性 | 表示内容全体から、一般消費者にとって「事業者の表示」であることが明瞭となっていればよい |
| 書き方 | 「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」のほか、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章での記載も挙げられている |
| 処分 | 措置命令の対象。課徴金納付命令の対象にはならない。ただし優良誤認・有利誤認が含まれる場合は課徴金の対象となることがある |
出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」。
とくに注意していただきたいのが、記載の「場所」です。Q&Aでは、投稿の本文ではなくリプライ(ツリー)に記載している場合は多くは明瞭とはいえないとされ、動画では冒頭だけの表記では不十分な場合があり、画面上に常に「広告」と表示することが望ましいとされています。また、「私は◯◯社の社員です」と所属を示すだけでは必ずしも明瞭とはいえないとされています。
BtoBでも関係します。協力会社や販売代理店に投稿を依頼している場合、採用目的で社員にSNS投稿を促している場合、導入事例の記事を広告費を出して媒体に掲載している場合——いずれも表示内容の決定にどこまで関与しているかが問われます。
チェック体制は、どう組むのか
専任の法務部門がなくても組めます。要点は、判断を個人の勘に委ねないことです。
表示チェックの流れ
原稿を書く人と確認する人を分けることが出発点です。
原稿に根拠欄を付ける
数字・比較・最上級の表現には、その横に出典と調査時点を書く欄を作ります。書けない表現は使いません。
書いた人以外が確認する
役職は問いません。売りたい気持ちのない人が読むことが条件です。
危ない表現の一覧と突き合わせる
自社で過去に指摘を受けた表現、業界で問題になった表現を一覧にして持ちます。
根拠資料を保存する
公開した版面と、根拠となった調査資料を対で保存します。数年後に説明を求められる前提で残します。
4が抜けている会社が多数です。調査した本人が退職すると、根拠を説明できない表示だけが残ります。
外部に依頼する部分の決め方
投稿や記事を外部に依頼する場合、依頼書に書いておく項目があります。
外部への依頼時に書面で決めること
口頭で頼むと、後から関与の有無を説明できなくなります。
販売代理店や協力会社に販促物の作成を任せている場合も、同じ確認が必要です。自社名で出る表示の責任は残ります。
制作会社に、どこまで求められるのか
最後に線引きの話です。制作会社は法律の判断をする立場にはありません。弊社がお引き受けできるのは、原稿に根拠欄を設けて確認を促すこと、過去に問題になりやすかった表現の指摘、表示の位置や視認性といった版面側の設計です。最終的な適法性の判断は、お客様側で、必要に応じて顧問の弁護士・専門家にご確認いただく前提になります。
ただ、制作の工程に確認の欄があるかないかで、事故の起こりやすさは明らかに変わります。弊社では、販促物やパッケージ、サイトの制作にあたって、根拠欄を含んだ原稿の様式と、社内確認の手順の設計までご一緒できます。
参考出典
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」
- 消費者庁 景品表示法(表示規制・不当表示)に関する公表資料
本記事は執筆時点(2026年10月)の公開情報に基づく一般的な整理であり、法的助言ではありません。個別の表示が違反にあたるかどうかは、表示全体や取引の実態を踏まえて判断されます。実際の判断にあたっては、消費者庁の最新の公表資料をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
